会社をつくっちゃえ
−起業の話・3−


 最初は軽トラックひとつ、自己資本ほとんど無し!ではじめたお店「てくてく」は、2年後にお店を持ち、インターネット通販をはじめ、スタッフも増え、10年目にとうとう会社になりました。

 遅々とではありますが、着実に足を伸ばしやっとここまで来たというのが実感です。

 有機野菜やエコグッズの生産者、製造者とお付き合いする時に、法人か個人経営かはあまり問われません。

 卸というのは、主に個人商店を中心に販売していますので、あなたがお店を開きたいと思ったときに会社にする必要は無いのです。

 一歩進んで製造・卸販売・会社との取引(BtoB)などをしたいと思ったときにはじめてあたる壁が<個人商店は相手にしてもらえない>ということです。

 また、インターネットでも決済の方法を広げたい、名前の通ったモールに参加したい、などと考えると、個人商店も可というところでもなかなか相手にしてもらえません。 対面販売で何年やってきた、とかホームページにどれだけアクセスがある、などは関係ないのです。

 「会社にしよう」と思ったのは上記のような理由からです。

 法人化のメリットとしてよく引き合いに出される税制上の利点とか、有限責任とかは残念ながら、てくてくのような小さなお店には関係ありません。

手作りがモットーの私たち。会社も自分たちで作りました。

1会社の作り方

●有限会社について

 会社組織といっても、株式会社・有限会社・合名会社・合資会社の4種類があります。
 てくてくは有限会社でいくことにしました。

 株式会社は、資本金1000万円が必要です。また、役員の改選、決算の公告、監査役が必要など束縛も多くなっているので大きな組織になってきます。

 最近増えている合資会社は、ITのベンチャー企業には適当かもしれませんが、取引先とのつきあいがある実店舗には向いていません。

 有限会社は、資本金が300万円で設立できる、設立が簡単で経費も安い、会社の運営も株式会社に比べて簡略化できるなど、小さなお店にはぴったりの形態です。

 また、「株式会社になれない弱小な組織」といった有限会社のイメージも最近ではずいぶんと薄れてきているようです。そんなわけで「有限会社てくてく」構想は始まりました。

●会社の名前について

 よく通称としての名前と別に、会社の名前を○○コーポレーションなどとつけているところもあります。 それはそれでカッコいいのですが、1店舗1組織でいくのでしたら、ややこしくないようお店の名前=会社の名前としたほうが混乱がなくていいようです。

 また、会社の名前には、アルファベットや算用数字(1,2,3・・・)、★や&などの記号は使えません。NTTはエヌティーティーですし、JRはジェイアールが会社名です。

 てくてくの会社名はすっきりと「有限会社てくてく」としました。

●資本金について

 有限会社の最低資本金は300万円です。

 資本金が多いほど、会社の信頼度がアップするという話もありますが、私たちはお金に余裕もありませんし、また必要になったら増資すればいいと考えて資本金は最低ラインの300万円にしました。

 資本金には、現物出資という手もありますが、手続きが煩雑ですし、やはり最低300万円は現金で用意できないようですと設立後すぐに操業が苦しくなってしまいます。

 また、特に今まで個人事業として経営してきた場合(法人なりという)、在庫とか設備とかは、会社設立後に個人から会社へ売却しますので、その分も資本として会社設立後に使えます。 今までお店を続けてきていれば在庫・設備が資本となっていますので、いきなりはじめるよりは実際の負担はずっと少なくてすみます。

●法人なり

 「法人なり」とは、今まで個人事業として経営を続けてきた人が会社組織にすることをいいます。

 会社というのは、法人という個人とは別の人格として考えるとよいと、税理士さんからアドバイスを受けました。

 つまり、まずは資本金300万円で誕生した会社という人格に、今まで続けてきた個人事業主は設備や在庫などを売り、会社からその代金を受け取ります。

 また、事業主は、従業員と同じように会社に労働力を提供し、かわりに役員報酬という賃金をもらいます。

 すべてこのように考えていくとすっきりするようです。

 銀行の口座や支払請求者の名義などもすぐには切り替わりませんが、会社設立後に個人が受けた売上は会社に払い、個人が払った経費は会社に請求しながら、数ヶ月かけ少しづつ会社へと名義を移行していく形になるのです。(早くすすめたほうが、帳簿上楽なようです。)

●営業年度

 個人と違って、会社は営業年度を自由に選べます。

 1月1日から12月31日や4月1日から3月31日までにすることもできますが、税務署も税理士さんも忙しいので、できるだけずらした方がいいようです。

 また、会社設立後すぐですと、あっという間に決算になってしまって大変ですので、てくてくは会社設立後からちょうど1年後の4月30日を決算日にしました。

●目的

 公序良俗に抵触せず、免許や資格が要らないものなら何でもできた個人事業と違い、会社は目的という名の事業内容を明文化しなければなりません。

 会社設立にあたって、目的に具体性が無いと登記所で受け取ってもらえませんし、あまり目的を限定してしまうといざ事業に幅を広げようと思ったときに、改めて補正をしに登記所へ出向かなければなりません。(3万円の手数料もいります)

 そこで、目的はできるだけ、今後広げてみたい、やってみたいと思うことまで書くことになります。ただし、あまりたくさん書くと、チェック項目や用紙が増えてたいへんです。

有限会社てくてくは、次のような目的を書きました。

1.食料品の販売及び輸出入
2.ミネラルウォーター、ビタミン類の補助食品の販売及び輸出入
3.鍋、浄水器等の家庭用品並びに日用品雑貨の販売及び輸出入 
4.書籍、雑誌等の販売 
5.衣料用繊維製品の製造並びに衣料品の販売及び輸出入 
6.化粧品の販売及び輸出入
7.茶類、清涼飲料水等の販売及び輸出入 
8.酒類の販売
9.惣菜の製造及び販売
10.喫茶、食堂、レストランの経営
11.前各号に付帯または関連する一切の事業及び業務

 他の会社の目的を参考に書いたのですが、「日用家庭用品」というのは具体性にかけるというので「鍋、浄水器等の家庭用品」と訂正しました。他の登記所では日用家庭用品はOKだったようですので、登記所によって若干の判断の差があるようです。

 栄養補助食品は食品とは別に書くようにということでした。

 酒類の販売は2〜3年後、免許が要らなくなったときにオーガニックワインやオーガニックビールを販売したいということで書きました。

 喫茶、食堂、レストランの経営や惣菜の製造及び販売は、将来できたらいいな、くらいに考えているので余り期待しないでね。

●社員(出資者)、役員

 有限会社の場合、株式会社の株主にあたるひとを社員と呼びます。(通称の社員とは違います。)

 有限会社は株式は発行できません。(しなくてよいのではなく発行できない)

 友達と共同経営でお店をしたかったら、会社組織にするべきでしょう。個人事業の形態ですと責任の所在があいまいになったり、だれがお金を出すか、誰の所有物かといった問題で頭を悩ますことになります。

 うまくいっているときはいいのですが、そうでない時にそれがまた友人関係のトラブルになったりします。

 今まで個人経営のお店をしていた人が法人成りする場合は、有限会社は役員は1人でもいいので、いきなり社員(出資者)を増やさず、最初は今までお店を経営してきた者だけが社員になるほうが、すっきりするようです。

 てくてくの場合、社員は私とつれあいのふたりです。社員がそのまま取締になり、私が代表取締になりました。

 有限会社では代表取締をおかず取締が共同で代表することもできるので、やはりここは今までどおり共同代表でいきたい、と思っていましたが、さまざまな決定に毎回取締役全員の裁定が必要で面倒くさいということで、私が社長、つれあいが店長ということになりました。

 社長、店長、部長、課長などの名前は通称で有限会社法では、(代表)取締役、監査、社員というような呼び名しかありません。

 てくてくで、私は社長兼集荷担当兼小間使い兼お茶くみ役です。



●さあ、会社を作ろう


 会社を設立するときには、まず次のことを決めます。

・商号
・本店所在地(戸籍どおり正確に。)
・目的(事業内容)
・出資者(社員名、住所、口数)
・役員(取締役、代表取締役、監査(必要なし))
・資本の総額(300万円以上)
・資本一口の金額(5万円以上、一般には5万円にするところが多い)
・営業年度(年度の終わりが2月の場合は2月末日と記載)
・現物出資(あると色々面倒)

 公証人役場と払込取扱金融機関、登記所の場所を調べておきましょう。

 商号は、類似商号といって似たような名前の会社が同じ行政区にある場合、認められません。

 一度登記所へ行って調べてきます。

 印鑑を持って法務局の中の会社登記所へ出向き、簡単な申し込み用紙で申請し閲覧させてもらいました。お金は要りませんし、私の行った登記所では印鑑も必要ありませんでした。

 類似商号の閲覧はすぐに済みました。ついでにいろいろな会社の目的を閲覧し、メモしてきました。そのあと、また登記所へ行って、自分の作った目的欄を細かくチェックしてもらいました。

●定款を作る

 次に定款を作って、公証人役場で認証してもらいます。

 用紙は文房具屋でも売っていますが、私は自分で作成したあとレーザープリンターを使って打ち出しました。

 すでに決めてある内容を、決められた書式で書いてプリントアウト。公証人役場へ行って一度みてもらいました。

 そこで指摘されたことを訂正し、次には郵便局で4万円の印紙を買って、役員全員(といっても私とつれあいだけですが)が印鑑と印鑑証明書、現金51、000円、ホチキスでとめた同じ内容の定款3通を持って、アポを入れておいた日時(4月19日)に出向きました。

 何度もチェックしたつもりでしたが、公証人役場で、つれあいの戸籍上の漢字が微妙に違うことが判明、急遽訂正しました。

 3通のうち1通を公証人に預け、謄本・原本とハンコが押された2通を受け取って帰ります。

 これで一山超えました。

●出資金払込み

 その次は、出資金の払込み。

 都会ではなかなか相手にされない規模の“てくてく”ですが、今までお付き合いいただいている銀行の営業の方が毎日のように顔を出してくれます。

 相談の結果出資金の払込は4月26日と決定。(いきなり事業をはじめる場合は、この出資金払込先がなかなか決まらず苦労するようです。できるだけ普段から出向き顔なじみになっておくことが大事なようですね。)

 出資金の払込が済むと、翌日出資払込金保管証明書というのを2通くれます。

 これで2山越えました。

 そのあと、B5の上質紙に出資金の調査報告書というのを作成し、取締役(監査がいれば同様に)の印鑑を押します。

 日付は出資払込金保管証明書の日付と一緒にすると間違いが無いようです。

●さあ、会社の登記だ

 最後はいよいよ最大の山場、登記です。登記に必要なものは

・設立登記申請書(市販のものでもかまわないが、私は定款と同じように自分で作りました。設立手続きの終了日は、出資払込金保管証明書と調査報告書の日付のうち新しいほうを書き込みます。)
・登録免許税納付用台紙(B5の白紙でかまわないと言われました。ここに登記所で買った6万円の印紙を貼ります。)
・定款の謄本(公証人役場で交付されたもの。コピーは×)
・取締役および監査役の調査報告書(自分で作ったものでOK)
・取締役全員の印鑑証明書
・出資払込金保管証明書(金融機関で交付されたもの)
(以上をまとめてホチキスで閉じる)
・登記用紙と同一の用紙(法務局でもらってきて、定款に書いたとおりに書く。本店は定款では最小行政区までの場合も、ここでは番地まで書き込む)登記用紙を起こした事由及び年月日の欄は<設立>とだけ書く。全部できたらクリップで留める。
・印鑑届書を登記所でもらい、購入しておいた会社代表者印を押して、必要事項を書き込む。
・定款に本店所在地を番地まで書いてない場合は、本店所在地を決議した旨の「役員会議事録」


申請手続きを委任する場合や現物出資がある場合はさらに書類が増えますが、ここでは触れません。

以上、登記のためのセットがひと通りできたら一度登記所に出向きチェックを受けます。
その場で細かくチェックしてアドバイスをもらいました。(これも地方だからできること?)ここでは訂正するだけの問題箇所は見つかりませんでした。
そして、登記当日の受付日、時間等を確認しておきました。

●いざ登記へ。

 登記の当日は、朝一番にでかけました。しかし、てくてくの場合は定款に本店所在地を番地まで書き込まなかったので、登記簿に「役員会議事録」で本店所在地を決定した旨を書いたものの提出が必要でした。登記の当日、指摘されたので慌てて店へ戻り作成しました。

 急いでワープロを打ち、つれあいと形だけの役員会をしたあと、印鑑を押し、登記所へ戻りました。

 翌日、無事登記は受理されました。謄本と印鑑証明をもらい(謄本1部1000円・印鑑証明書500円)おしまいです。

 ※印鑑の種類を間違いやすい。個人印と代表印を間違えて、指摘されました。




●会社を作るのにかかったお金(てくてくの場合)

証明書にかかった費用
印鑑証明書発行手数料
 代表取締役3枚 900円
 取締役2枚×1 600円
定款の認証にかかった費用
 印紙代 4万円
 手数料 5万円
 謄本証明料 1000円(1枚250円)
出資払込事務取扱委託料
 7875円(資本金×0.25%+消費税)
登録免許税
 6万円(資本金額の7/1,000と6万円の大きい数のほう)

その他
印鑑代(代表取締役印・会社印・角印・ゴム印)インターネットで購入
   45、843円
コピー代、紙代等  326円
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合計    205,044円
他に資本金300万円
※会社設立費用は、個人で立替え、登記のあとに会社へ請求します。

他に謄本を取るときには一部1000円、印鑑証明書は一部500円必要です。登記完了後に謄本を8部、印鑑証明書を4部取りました。(合計10000円)

●会社を作るのにかかる時間

 10日ほどで作れます。てくてくの場合はすでにお店があったので、税理士の方や商工会、銀行、友人知人などの知恵をお借りしながら20日ほどかけてゆっくり準備しました。


●会社は作るのが目的ではない

 会社にするのは手段です。これで終わりではなく、これからがスタートです。会社組織にするというのは自分たちの趣味を超え、社会の中での役割を担うという意味もあります。

 会社も人と一緒で、いろいろな人たちの支えがあって育っていきます。どう育てるかが一番大事なことではないでしょうか?




登記後の届出(税務署や自治体、労働基準局や社会保険事務所などへの届出)や、帳簿の移行などについては、後日レポートします。

※てくてくの定款や各種書類を参考にしたい方はメールをください。(ワードまたはPDFファイルでお送りします。)

 

てくてく  立田秀信(しう)  2001年5月3日


mailto:てくてくinfo@tekuteku.net