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月経用品の歴史と意識の変化

 

はじめに



 女性が一生のうち40年、月に一回、3日から一週間として、総計すると平均3,000日を越える日数を月経とつきあっていることになります。

 その月経期間中にお世話になるのがナプキンやタンポンなどの月経(生理)用品です。


 月経用品の中でも、半世紀ほど前に登場した使い捨てナプキンは、より便利に、機能的にと進化を遂げ、今や日本は月経用品の品質では世界一といわれています。

 このように便利になることで、多くの女性が月経期間中も普段と変わりなく過ごせるようになり、女性の社会進出を促す大きな要因のひとつとなりました。

  女性に自由を与えてきた使い捨てナプキンですが、いっぽうで多くの問題も顕在化してきました。

 その一番の負の側面はやはり、使い捨てであるための大量消費、廃棄物処理といった環境問題です。

 一般的な呼称である「紙ナプキン」は、紙や木材パルプだけで作られているようなイメージを与えますが、実際には使い捨てナプキンの原料の約70%は、石油から化学合成した原料からなっています。 

 また最近では化学物質を肌のデリケートな部分に直接当て続けることによる人体への影響、そして女性の意識に与える影響についても目を向けるようになってきました。
 

月経用品の歴史 


女性にとって生活必需品の月経用品ですが、その歴史は意外と知られていません。

 月経用品の歴史を追うことで、時代ごとの人々の月経への意識やかかわりがどう変化していったかが伺えます。 

 月経の処理にはナプキンを主体とする「あてもの」とタンポンのような「つめもの」の2種類に分類できます。


 現在、日本では「あてもの」94%、「つめもの」6%というように、(薬事統計2000年)使い捨てナプキンが圧倒的に多くなっています。

 しかし、それは「アンネナプキン」が発売された1961年以降、そしてサニタリーショーツの普及もあってから、それ以前は「つめもの」が主だったと考えられています。


  月経用品が記録に登場するのは平安時代から。984年に医師・丹波康頼が著し、円融天皇に献上された日本最古の医学書「医心方」の中に、月帯(けがれぬの)という月経帯が紹介されているそうです。

 戦国時代末期には各地で綿花の栽培がさかんになり、月経時には木綿を詰めていたとの記録がありますが、庶民は麻や葛、こうぞなどを詰めていたようです。


 江戸時代になると記録がはっきりしてきました。

 馬の前垂れに似ていることから「お馬」と呼ばれた、褌のような形の月経帯に漉き返した再生和紙(浅草紙など)をあてて使用するようになりました。

 使い古したぼろ布や綿なども一般的で、あてたりつめたりして使っていたようです。

 遊女たちは絹織物を裂いてこより状にして「赤玉」「込め玉」と言ってタンポンとして使っていたとの記録もあります。

 
  明治時代には、ぼろ布や日本手拭いも一般的に使われ、今の布ナプキンと同じように、洗って繰り返し使われるようになりました。

 1886年(明治19年)に脱脂綿が日本薬局方に指定され、体液吸収に効果のある医薬品として普及し始め、その使用が一般に普及、浅草紙やボロ布に代わって脱脂綿が使われるようになり、使い捨てが一般的になりました。

 第二次世界大戦には、衛生材料用綿花は原料不足になり『生活必需物資統制令』に指定され、女性たちは脱脂綿の代用品としてチリ紙などを使用しました。 

 戦時中は月経が止まってしまう女性も多く、また戦時下という事で各家庭で工夫して処理していたようです。

 また、布も綿花も手に入らない状況下で無月経になることを、月経処理の手間が無い事を、むしろ喜んだという体験談には戦争時の悲惨さの一面が伝わってきます。


  1948年に統制が解除されると、脱脂綿は再び月経用品の主役に返り咲きました。
 
 その後1961年アンネナプキンが発売されると社会現象となって一気に広がり、今日主流の使い捨てナプキンの時代が始まりました。

 それまでの脱脂綿と異なり、紙綿、紙、防水材でできていて、吸収力が飛躍的に高まったこと、個別包装されていて携帯に便利で衛生的なこと、トイレに流せることなどから、時代のニーズに合い、コストダウンにも成功した事からまたたく間に月経用品の主流になりました。



 1962年毎日広告社の調査では、脱脂綿が全体の67%、ナプキンは26%でした。7年後、1969年の調査では、脱脂綿使用者5%に対し、ナプキン使用者が89%と逆転しました。


 1978年に、初めて高分子吸収剤を使ったナプキンが発売され、従来品より薄く、吸収力のあるナプキンを作ることができ、使用感が大きく向上するとともに、女性の社会進出への大きなきっかけにもなっていきました。

月経に対する意識の変化



 死なない、月経中の女性は、神の支配下にあり、月経期間中の女性は神聖視されていました。

 月経中の女性は神聖な槻の木でできた槻小屋に籠り、祈祷・祀りをして神を迎える神事をしていたそうです。


 6世紀に仏教が伝来されると、女性は穢れたものとして扱われはじめ、槻屋籠りは神聖な祀りから不浄な女性の隔離と意味が転化していき、月経小屋、別炊き、別膳などと形を変えながらも、月経は「穢れたもの」との意識を明治時代まで形成していきました。



 アンネナプキンの発売から約50年、使い捨てナプキンの登場は女性たちを身軽にして、ひとびとの意識にも大きな影響を与えてきました。


 しかし、現在の女性たちがそれによって、「穢れ」や「はじらい」の呪詛から完全に解放され、女性である自分を楽しんでいるかというと、残念ながらそうではないようです。

 使い捨てナプキンによって処理の負担からは解放されたけれど、自分の「経血」を汚物として扱うことで、経血に対して新たな嫌悪感が芽ばえてきたのではないでしょうか。

 テレビCMで男性アイドルや人気タレントが月経用品を宣伝する世の中であっても、現在でさえ私たちが月経をおおっぴらに語れないのは、それが性的なものを連想させるというより、月経を「穢れたもの」と考えていた長い歴史の刷り込みがあるからなのかもしれません。

 トイレに設置された「汚物いれ」は、この考えを次の世代に引き継いでいく負の遺産なのかもしれません。



参考:川原のりこさんの卒業論文「月経用ナプキンが女性の意識と身体に与える影響と、今後の布ナプキンの普及可能性について」(2002年)




 生理ナプキンのホームページ http://www.jhpia.or.jp/napkin/napkin_top.htm


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